手も足も出ない。占領軍に反抗すれば、射殺されても文句が言えない時代なのである。腹立たしいやら口惜しいやら、意思の疎通の欠如を、ぼくはひどく呪(のろ)った。
当分のあいだ、この厭(いや)な思い出はぼくから頑強に離れず、しぜん、ぼくの漫画のテーマに、そのパロディーがやたらと現れた。地球人と宇宙人の軋轢(あつれき)、異民族間のトラブル、人間と動物との誤解、そして、ロボットと人間との悲劇……アトムのテーマがこれなのである。
(講談社版手塚治虫漫画全集『手塚治虫エッセイ集 1』より)
ガロンというロボットが口から毒ガスを吐き出すのをやめさせるために、ばかな軍人が水爆を使ってガロンを破壊しようとするシーンを描いたことがありましたが、なんと、いまや現実のほうが、マンガの世界を超えてしまっています。
(科学の進歩は何のためか 「ガラスの地球を救え」より)
自然への畏怖をなくし、傲慢になった人類には必ずしっぺ返しがくると思います。
いまこそ、全地球的レベルで、超長期的、何百年何千年という視点から、地球を考える必要があるのです。
(科学の進歩は何のためか 「ガラスの地球を救え」より)
アトムも人間の中にあっては、差別される子。なのであって、ふつうの子ではありません。
けれども、信念を持って行動し、決してあきらめたりしない。
ときには、どう考えても勝ち目のなさそうな相手にも、ぶつかっていく子として描いています。
これはもちろんマンガの上でのことですが、本来、子どもというものにはそんなエネルギーがあるのではないでしょうか。
いや、そうあってほしいというぼくの願いでもあります。
(子供の未来を奪うな『ガラスの地球を救え』より )
「きみはロボットが人間に反抗すると予言した・・・しかしな、ロボットと人間のあいだに愛情が交流しているうちは・・・話し合える、きっと理解しあえる!!」
(「鉄腕アトム」第60話 メラニン一族の巻 )
一生懸命に考え、悩み、憤り、挫けず前へ進もうとするアトムが、傷つきながらも自ら培ってきた社会と対等に向き合う心の強さ。逞しさ。
それがアトムの本当のチカラとなり、戦う強さとなったのです。科学技術や社会のエゴに翻弄されながらも、それに負けない自分の意志や情熱を持つことが、何よりも生きてゆくチカラとなるのだと、アトムの姿を通して作者の、今は亡き父の言葉が聞こえてきます。
(『こころにアトム 手塚るみ子』より )
とてもパッションを感じるステキなデザインでブッダに続く人気商品になるのではと期待が高まります。
この小さいふを買う方がアトムのハートごと胸ポケットに忍ばせてAI時代の社会を少しでも楽しく過ごしてくれたらと期待しています。
手塚るみ子
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