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手塚治虫


鉄腕アトム

(C)手塚プロダクション


国民的アニメ鉄腕アトム
「鉄腕アトム」といえば子供から大人まで誰もが知っている大人気のキャラクター。
そのアニメ化第1作は日本最初のテレビアニメシリーズとして大ヒット平均視聴率27.4%を記録し、日本の第1次テレビアニメブームのきっかけをつくったアトムは手塚治虫の全作品の中でももっとも有名な作品です。
鉄腕アトム

(C)手塚プロダクション / 講談社

誤解されてきた本当のテーマ
原子力をエネルギー源として10万馬力の力持ち、空を飛び、感情を持つ人間に限りなく近い少年ロボットが悪と戦い活躍するアニメ鉄腕アトム。

親しみやすいキャラクターとして知られるアトムですが、実は手塚治虫が鉄腕アトムを通して本当に伝えたかったテーマは「科学と人間のディスコミュニケーション(意思の疎通の欠如)」であると言います。

これには自身が戦後に占領軍に受けた理不尽な暴力が深く関係しているそうです。

その時、兵隊に英語で何か聞かれた氏ですが、当時「敵性語」として英語の勉強を中断されていたため何を言われているのか分からず「ホワット?」と聞き返すのが精一杯で、たちまち殴り倒され「ウワッハハハ……」と笑って兵隊は行ってしまいました。

手も足も出ない。占領軍に反抗すれば、射殺されても文句が言えない時代なのである。腹立たしいやら口惜しいやら、意思の疎通の欠如を、ぼくはひどく呪(のろ)った。

当分のあいだ、この厭(いや)な思い出はぼくから頑強に離れず、しぜん、ぼくの漫画のテーマに、そのパロディーがやたらと現れた。地球人と宇宙人の軋轢(あつれき)、異民族間のトラブル、人間と動物との誤解、そして、ロボットと人間との悲劇……アトムのテーマがこれなのである。

(講談社版手塚治虫漫画全集『手塚治虫エッセイ集 1』より)


せめて話し合うことができれば、きっと分かり合えるはずなのに。
鉄腕アトムはそうしたすれ違いの悲しみを描き、何のための科学か警鐘を鳴らす作品なのです。

鉄腕アトム

(C)手塚プロダクション / 講談社

科学の発展と幸福
氏は、科学の発展が必ずしも人類の幸福に繋がっていないことを悲しみ、今こそもっと広い視野で地球のことを考えねばならないと続けます。

ガロンというロボットが口から毒ガスを吐き出すのをやめさせるために、ばかな軍人が水爆を使ってガロンを破壊しようとするシーンを描いたことがありましたが、なんと、いまや現実のほうが、マンガの世界を超えてしまっています。

(科学の進歩は何のためか 「ガラスの地球を救え」より)


「毒ガスの被害を抑えるために水爆を使う」荒唐無稽に思えますが生産性をあげるための危険な薬剤が問題になったり、効率を優先して廃棄物を増やしたり「ばかな軍人」を笑ってばかりもいられないのかもしれません。

自然への畏怖をなくし、傲慢になった人類には必ずしっぺ返しがくると思います。
いまこそ、全地球的レベルで、超長期的、何百年何千年という視点から、地球を考える必要があるのです。

(科学の進歩は何のためか 「ガラスの地球を救え」より)


わたしたちが本当に目指すべきことは何か、幸せとは何なのか。
本作のテーマである「科学と人間のディスコミュニケーション」とは自ら生み出した「科学」に振り回され、自然への敬意を失い、自らを見失った人類が今こそ考えねばならない時であると訴えます。
鉄腕アトム

(C)手塚プロダクション / 講談社

アトムと差別
アトムが「人間らしくなりたい」と学校に通うシーンがあるのですが、ロボットなので計算は一瞬だし運動能力では人間は到底敵いません。
アトムはその時どうしようもない疎外感を味わいます。

アトムはいつも努力して人間に近づこう、人間の社会に溶け込もうとします。
さらには命をかけて敵と戦い、しかしそれでも何かあるたびに「ロボットなんかやっぱり信用できない」と差別され、何度も哀しみに暮れます。

確かにわたしたちも「外国人」や「LGBT」など、知らないうちに本人そのものではなくカテゴリーや分類で他者を判断してしまうことがあるかもしれません。

しかしアトムは決して挫けず、どんな強敵にもどんな理不尽にも、何度だって立ち向かいます。

アトムも人間の中にあっては、差別される子。なのであって、ふつうの子ではありません。
けれども、信念を持って行動し、決してあきらめたりしない。
ときには、どう考えても勝ち目のなさそうな相手にも、ぶつかっていく子として描いています。
これはもちろんマンガの上でのことですが、本来、子どもというものにはそんなエネルギーがあるのではないでしょうか。
いや、そうあってほしいというぼくの願いでもあります。

(子供の未来を奪うな『ガラスの地球を救え』より )


努力しても、相手のことを想っても、思ったとおりの結果にならないことがあります。
そこで挫けることなく、理想に向けて何度でも立ち上がり歩き続けてほしい。

作者は、読者へ呼びかけます。
鉄腕アトム

(C)手塚プロダクション / 講談社

きっと理解しあえる!相互理解への望み
科学と人間のディスコミュニケーション、人間の心に棲み着いた差別の心を描きながらも、相互理解の望みも決して捨てない手塚治虫。

メラニン一族の巻ではお茶の水博士に語らせています。

「きみはロボットが人間に反抗すると予言した・・・しかしな、ロボットと人間のあいだに愛情が交流しているうちは・・・話し合える、きっと理解しあえる!!」

(「鉄腕アトム」第60話 メラニン一族の巻 )

子供向け、なのに
地球を救うために太陽に飛び込むところでアニメの鉄腕アトムは終わるのですが、その後「アトムはどうなったのか」「助けれるなら助けてやってくれ」「復活させてくれ」というファンからの手紙が山ほど届いたと言います。

この鉄腕アトムは幾つかのシリーズが作られていますが、3つの最終回があると言われ、それが子供向けのアニメとは思われない内容なのです。
鉄腕アトム

(C)手塚プロダクション / 講談社

子供向け、だからこそ
鉄腕アトムの最終回も子ども向けの漫画にはふさわしくないような大人の現実を突きつけた漫画という娯楽、フィクションに留まらない内容になっています。

手塚治虫も、決してマンガだけを読むような人間になってはいけない。漫画を読んだら同じくらいの小説や哲学書も読み、一流の絵画や一流の音楽に触れて、自分の人生の糧にしなさいと語っています。

たくさんの子どもたちが見ているアトムの最終回。誰よりも子どもを愛した手塚治虫には並々ならない思いがあったはずです。

最終回には、アトムに変わって自分たちの力で、いつの日かこの世界を変えて欲しいという強い願いがあるように思えてなりません。
原作アトムを読もう
長女の手塚るみ子さんはテレビアニメの作られたアトムのイメージを払拭して、改めて原作を読むことで泣き虫でナイーブなアトムや、アトムの本当の強さを発見することができると語っています。

一生懸命に考え、悩み、憤り、挫けず前へ進もうとするアトムが、傷つきながらも自ら培ってきた社会と対等に向き合う心の強さ。逞しさ。
それがアトムの本当のチカラとなり、戦う強さとなったのです。科学技術や社会のエゴに翻弄されながらも、それに負けない自分の意志や情熱を持つことが、何よりも生きてゆくチカラとなるのだと、アトムの姿を通して作者の、今は亡き父の言葉が聞こえてきます。

(『こころにアトム 手塚るみ子』より )


手塚るみ子さんから、なんと今回の小さいふにメッセージをいただきました。

とてもパッションを感じるステキなデザインでブッダに続く人気商品になるのではと期待が高まります。

この小さいふを買う方がアトムのハートごと胸ポケットに忍ばせてAI時代の社会を少しでも楽しく過ごしてくれたらと期待しています。

手塚るみ子



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編集/文 中辻渚 中辻晃生 楠戸達也
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