「テアトル虹」第1回「ジュディ 虹の彼方に」


2020年9月2日発売
『ジュディ 虹の彼方に』

ブルーレイ:¥5,280(税込)
DVD:¥4,180(税込)
発売・販売元:ギャガ

© Pathé Productions Limited And British Broadcasting Corporation 2019

【STAFF】監督:ルパート・グールド
【CAST】レネー・ゼルウィガー/ジェシー・バックリー/フィン・ウィットロック/ルーファス・シーウェル/マイケル・ガンボン

「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズや「シカゴ」のレネー・ゼルウィガーにゴールデングローブ女優賞や、アカデミー主演女優賞をもたらした「ジュディ 虹の彼方に」は、ゲイのイコンであるジュディ・ガーランドの晩年を描いたドラマだ。

今も不朽の名作として語り継がれている映画「オズの魔法使」のドロシーを演じ、ハリウッドのスターダムへと駆け上がったものの、以後、青春ミュージカルスターとして、次から次へと作られるようになった類似映画に出演するために体を酷使。それをごまかすように映画会社の首脳部から与え続けられたアンフェタミンや睡眠薬などの影響で、薬物依存や神経症に苦しめられるようになった彼女は、遅刻を繰り返し、撮影に穴を開けるようになった結果、映画会社から解雇されることに。

そんな彼女は、コンサートに活路を見い出し、そのパワフルなステージで好評となり、さらにレディ・ガガ主演でリメイクされた「スタア誕生」でスクリーンにカムバック。 再びその持って生まれた天性の実力を見せつけ、オスカーにまでノミネートされたものの、ハリウッドは彼女の行動を問題視したせいか、受賞を逃し(その時の主演女優賞は「喝采」のグレース・ケリー)、さらにやっとの事で獲得したテレビ番組「ザ・ ジュディ・ガーランドショウ」も、あるクレームから半年で終了したことで、 再びアルコールや薬物の依存症に。

1960年代後半には家賃にも事欠くわ、そのせいで子どもの親権まで奪われるわのドン底状態。そんな時、ロンドンで5週間にも及ぶ長期ライブをやらないか?との話がきて、金銭面のことを考えると背に腹を変えられないとばかりに引き受けたものの、メンタルは相変わらずボロボロ。とはいえ、子どもたちともう一度一緒に暮らしたい一心でロンドンに旅立った彼女だったけれど・・・。。

ショウビジネス界の中でしか生きてこなかった彼女が完全に過去の人であるという現実を知らされる様は残酷すぎる。ふとよぎったのは、サイレント映画時代の大女優と若き脚本家を描いた映画「サンセット大通り」の主人公ノー マ・デズモンド。彼女は最後まで虚構の中で生き抜いてしまったけれど、 ジュディは現実に向き合わざるを得ない・・・。

そんなロンドン滞在中のジュディにとって心の癒し、拠り所となるのはダンとスタンというゲイカップル。熱狂的なファンである二人はジュディのありのままを全面的に受け入れている。 そんな彼らとあるきっかけから生まれた思いがけない交流は、ジュディがロンドンで唯一心を許した許した場面であることがわかる。

長年、ハリウッドで虐げられてきた者と、社会で虐げられてきた者同士が通わせる、闘ってきたという自負と無念。ここでジュディが歌う「Get happy」には落涙(サントラではサム・スミスとデュエットしている!)。

映画の頭に「A heart is not judged by how much you love; but by how much you are loved by others.(心というものは、どれくらい君が愛したかではなく、君がどれくらい人に愛されているかによって判断されるのだ)」という「オズの魔法使」でのセリフが引用されてるが、しみじみとラストに沁みこむはずだ。

※個人的にはひとくくりにするのは正直好きではないけれど、LGBTQとはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クエッショニングまたはクイアの略で性的マイノリティを“一応理解しやすく”頭文字をまとめて表した言葉。

仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


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