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栃木レザー

栃木レザーについて
革業界のドンがクアトロガッツに来た!
クアトロガッツでは小さい財布「小さいふ。」の定番カラーをはじめとするアイテムの様々な部分に、日本で最高峰と言われる栃木レザー社製のフルベジタブルタンニングレザー(植物性タンニン鞣しのヌメ革)を使用しています。



クアトロガッツに「本物の革とは何か?」を教えてくれたのが、栃木レザーを販売している革屋さんの会長であり、革業界のドンともいわれるハシモト会長です。

80歳にしてエネルギッシュな会長。長年革に関わり、現在の栃木レザーの製法の考案、再建のバックアップをはじめ、革の素材から製品の開発まで、革業界の発展に貢献されてきました。

革と共に人生を歩んできたこられた会長からは
いつも革にまつわる話が語られます。
”本物の革”の魅力とは何なのか?
とても貴重なお話を聞かせていただくことができました。

一部ではありますが、その時のお話を引用しつつ
ヌメ革と栃木レザーのフルベジタブルタンニングレザーについて
お話をさせていただきます。
よりいっそう革への見識を深め
より良いモノづくりに励んでいければと思います。



世界に誇る革
会長の革屋さんには海外からも沢山の人が
「栃木の革を売ってほしい」とやってくるといいます。
栃木レザーには世界有数の設備と高い技術力があり
海外の一流ブランドのバイヤーも評判を聞きつけて
革を求めてやってくるのです。

しかし会長は大手ブランドよりも以前から栃木レザーを使っていた
小さな工房に「君たちのような小さな工房が
栃木レザーの良さを伝えてきてくれた」と
優先的に革を卸しているのです。

みんな栃木の革がええもんやと聞いて買いにくるけど
それは違う
あんたがこの革に惚れ込んでくれるんなら売るけども
売れてるから分けてくれでは困る
革のことを知って納得した上で
『どうしてもこれが使いたい』と言うんなら売りたい


【極小財布・小さい財布】小さいふ。 ペケーニョ【カラーオーダー】クアトロガッツ
フルベジタブルタンニングレザーとは?
傷があるのが良い革の証なんや

革には本来傷があるもんなんや
この革は塗料を吹き付けて色をつけるんじゃなくて
タンニン鞣(なめ)しと染色にこだわっているから
牛が生きているときにつけた傷やシワがそのまま残ってるんや
使ってみれば本当に良い革っていうことがわかる


フルベジタブルタンニングレザーは文字の通り植物性の天然成分でつくられた植物性タンニン鞣しの革です。
有害な物質を一切使わずに天然のチェスナット(栗)、オーク(ナラ)、ミモザ(アカシア)などのワットルバーグ(樹皮)から抽出された樹液のタンニン(渋)の槽に1枚1枚を漬け込む期間は実に20日間。
長い時間をかけて鞣されたあとに、染色によって色がつけられます。

本来の革のままの風合いを生かした製法のため、使うほどに革が本来含んでいる油分がにじみでて、色艶が増しエイジングする革になります。
革本来の風合いが生きていることが「本物の革」と呼ばれる所以です。
「本物の革かどうかは噛めばわかる」昔の職人さんはタンニンの味で見分けることができたそうです。



本物の革は傷が入っているもんや
人間も傷だらけやないか


革を革らしく
タンニン鞣しとクロム鞣し
現在、主に流通している革の9割が化学薬品を使った「クロム鞣し」による製法の革といわれており、着色には革の表面に顔料による塗料を塗り、キズなどを隠したものが多く流通しています。
タンニンなめしに比べ、クロム鞣しは革をなめす工程と時間が少なくコストが安く、水や熱に強く、傷がつきにくいため扱い易いという利点があります。柄物や色物、型押しなど様々な加工をするには良い革です。

クロム鞣しの革ジャンやバッグを使うとだんだんひび割れてくるのは、実は革の表面に塗料を吹き付けているものが多いため、この塗料がひび割れてくることが原因なのです。
しかし、何倍もの早いスピードで製造ができ、低コストで大量生産が可能であり、傷やしわなどの革本来の風合いが隠れるため、店頭に並ぶときに個体差がなく管理がしやすいという理由から、多くの製品で使用されるようになりました。

こうしてクロム鞣しが革の主流になる反面、革が本来の持つ味や、風合いは失われていきました。

なんで革を革らしく使わへんのや


エイジングを楽しめる ”革らしい革” であったフルベジタブルタンニングレザーは、表面がコーティングされていないためデリケートで、革本来の傷やしわなどの特徴がそのままなため個体差があり、その天然素材ならではの扱いにくさから”プロが使わない革”と呼ばれるようになりました。

会長は以前よりそのことに疑問に思い、本物の革を追い求めるようになりました。

"本物の革"へのこだわり
昔ながらの革をつくる製法
古来より人の暮らしには革がいつもがありました。
メソポタミアや古代エジプトでは様々な革製の道具使用されており、200万年前の旧石器時代の遺跡からも革を加工する道具が見つかっています。

会長は日本最大級のプール(ピット槽)を持つ栃木レザー社へ、化学薬品ではなく植物性のタンニンで鞣すイギリス発祥の伝統的な製法によるフルベジタブルタンニングレザーをつくることを提唱していました。
しかし、そのあまりにも手間と時間がかかる製法に社内からも「この革のためにうちも潰れてしまう」と反対の声があがっていたそうです。

今や有名になった栃木レザーですが、その昔ながらの製造には通常の何倍もの時間と手間がかかります。
見学に来た他のタンナー(革をつくる工場)が「うちなら1/10の手間でやる。あんなんやってたらメシ食っていかれへん!」と匙を投げるほど、現代の革づくりの流れに逆行した製法だといいます。

しかし、そんな時代の流行に流されることなく、何十年先を見据えた"本物の革"へのこだわりから、
栃木レザーのフルベジタブルタンニングレザーは生まれました。

プロになんぼ頼んでも頼んでも頼んでも・・・
やってくれんかった
それでも俺はどうしてもこれが欲しいねんやって
22年かかってやっと栃木レザーは
ウン言うてくれた





強く美しい革の秘密
ゆっくり長い時間をかけて
植物性タンニンなめしの革は30以上の工程を経てなめされ、染色の乾燥もいれると通常の革の数倍も手間と時間をかけて創られています。

通常革を鞣すときには革にタンニンを浸透させるために「タイコ」と呼ばれる大きな大きなドラムに革とタンニンの液体を入れて回す製法が多く使われています。

しかし栃木レザーのフルベジタブルタンニングレザーは、革の繊維を崩さずに植物性タンニンを革の中心まで浸透させるために、あえてそのような製法をとらず、160ものタンニン濃度が違うタンニンのプール(ビット槽)に順番にタンニン濃度を上げて浸けこんで鞣します。

長い長い時間をかけてシーソーのように左右に揺らしながらゆっくりゆっくり鞣していくのです。

革と渋が腐らないようにずーっとみぎひだりに
コトーンコトーンとこまめに動かしながら
繊維を潰さんように芯まで染み込ませていくんや




革のハリときめ細かさ
革は高い伸縮性があるので、通常は生産量を上げるために、原皮の状態で引き延ばしてからつくられますが、栃木レザーのフルベジタブルタンニングレザーは繊維が痛んでしまうことを避けるために無理な引き延ばしをしません。

この違いは革の裁断面に現れ、繊維が潰れた革の断面はボサボサになりますが、繊維がしっかりした革は、断面もしっかりと目が詰まっているのが特徴です。

革は生き物 無理させたらあかん
革は人間の皮と一緒で引っ張れば伸びる
引っ張って伸ばしたほうが大きくなるやろ
でも栃木のレザーはピンと張りはしても引っ張って伸ばしはしてない
だから繊維がしっかり残ってる





染色へのこだわり
革を芯まで染める

昔の学生カバンなんかは使ってると
横やら角やら塗料が剥げて下地が出てくるんや
塗料を塗ってるだけやから
上から塗ったもんはいつか剥げる

革を芯まで染めてへんからな
表面はツルツルに見えるけどあれは革そのものやなくて
塗料が塗ってあるだけなんや


染色する際に革の内側(芯)まで染色することを芯通しといいます。
栃木レザーのフルベジタブルタンニングレザーはこの芯通しにこだわった革です。
ドラムなどを使って革と染料を下地に浸透させたあと
表面につける染色は今も職人が手作業で行っています。
しっかりと着色することで色艶が増し耐久性が高まるといいます。

塗料を塗った革に比べてヌメ革というものは表面を塗装やコーティングをせずに革本来の風合いを残した革なので、どうしても伸びた爪や固いものなどで擦ると表面にキズがついてしまいます。
しかし塗料を塗った革であれば傷の色は戻ることはありませんが、「芯通し」で革の芯まで染料を浸透させているため、表面にキズがついても目立たず、内側から染み出てくる油分によりそのキズも分からなくなり、味の一部となります。

革にはそうゆう力が備わっとる


染色の革は気候、時期によって革の色が若干異なります。
革の特徴、個性として楽しんでいただければと思います。
並べてみると時期による色の違いが分かります。(写真下)



小さい財布小さいふ




時間をかけてつくった革の本来の力
本当の革ってのはそうゆうもんや
通常「もの」は買った瞬間・使った瞬間から劣化していきます。
しかし本当に良いヌメ革は使えば使うほどにエイジングして深く熟成され、最初は堅いヌメ革も使い込むほどに「あなたに必要なだけ」柔らかくなるという、身近でありながら人知を超えた素材なのです。

使う人に合わせて形が馴染み、風合いが変化していく革。
会長はそれを「重いけど軽い」と表現します。。

革は他の素材に比べて『重いけど軽い』
人間の赤ちゃんといっしょや
使ってるうちに いつも抱いてるうちに体に馴染んでいく
それが時間をかけてつくった革の本来の力なんやな
昔からある本当の革とはそうゆうもんや


長い年月にわたって革にたずさわってきた会長の言葉からは、
革への深い愛情と、革の世界の奥深さ、革の魅力への自信が伝わってきます。



栃木レザーの環境革命
土に還る革
栃木レザー社のフルベジタブルタンニングレザーは「タンニン鞣し」の中でも昔ながらの手法で現在主流の製法よりも何倍もの時間をかけて丁寧に鞣めされた素材で、この革はほぼ100%土に還ります。

しかし、製造効率が良いことから多く流通している化学薬品で鞣された「クロム鞣し」の革の多くは化学薬品により創られているためなかなか土に還りません。
また廃棄時に燃やすと有害物質が出てしまうことや、革特有の艶やかなエイジングがしづらいことなどから、、使い込むほどに魅力が増し自然にも優しい「タンニン鞣し」が再注目されています。

今更になってヨーロッパを中心に
ノークロムやと言うてる


栃木レザー社では自然環境の保護のため、革の製作工程で出る排水処理の際にも薬品を使わず、バクテリアや微生物によって段階的に中和、浄化される循環システムを採用しています。

その際に出る汚泥を肥料として再利用できるよう農林水産省に登録しています。伝統的な技術と革新的な智慧で、自然との共生という環境革命を目指しています。

栃木レザーで創られた小さいふ。ももちろん土に還ります。
ぜひ毎日ガシガシ使ってあげてください。

栃木レザーができるまで "LEATHER TRIP IN TOCHIGI LEATHER"
クアトロガッツ革の旅。
いざ栃木レザーへ。



おわりに
ハシモト会長の言う”本物の革”の意味。
まだまだ奥の深い革の世界ですが
少しは分かることができたかと思います。

ハシモト会長よりいただいた「わかる」という本があります。
会長自身の語る生い立ちと、周囲の人たちの証言によって会長の人となりが語られた本です。
80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われた
その稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
クアトロガッツでは「わかる。ハシモト会長かく語りき」として連載中。
是非ご覧ください。


「わかる。ハシモト会長かく語りき」
商売とは、人間とは、人生とは、「革っちゅうもんはなぁ、、、。」から始まる、人生談義。