みんな栃木の革がええもんやと聞いて買いにくるけど
それは違う
あんたがこの革に惚れ込んでくれるんなら売るけども
売れてるから分けてくれでは困る
革のことを知って納得した上で
『どうしてもこれが使いたい』と言うんなら売りたい
革には本来傷があるもんなんや
この革は塗料を吹き付けて色をつけるんじゃなくて
タンニン鞣(なめ)しと染色にこだわっているから
牛が生きているときにつけた傷やシワがそのまま残ってるんや
使ってみれば本当に良い革っていうことがわかる
本物の革は傷が入っているもんや
人間も傷だらけやないか
なんで革を革らしく使わへんのや
プロになんぼ頼んでも頼んでも頼んでも・・・
やってくれんかった
それでも俺はどうしてもこれが欲しいねんやって
22年かかってやっと栃木レザーは
ウン言うてくれた
革と渋が腐らないようにずーっとみぎひだりに
コトーンコトーンとこまめに動かしながら
繊維を潰さんように芯まで染み込ませていくんや
革は生き物 無理させたらあかん
革は人間の皮と一緒で引っ張れば伸びる
引っ張って伸ばしたほうが大きくなるやろ
でも栃木のレザーはピンと張りはしても引っ張って伸ばしはしてない
だから繊維がしっかり残ってる
昔の学生カバンなんかは使ってると
横やら角やら塗料が剥げて下地が出てくるんや
塗料を塗ってるだけやから
上から塗ったもんはいつか剥げる
革を芯まで染めてへんからな
表面はツルツルに見えるけどあれは革そのものやなくて
塗料が塗ってあるだけなんや
革にはそうゆう力が備わっとる
革は他の素材に比べて『重いけど軽い』
人間の赤ちゃんといっしょや
使ってるうちに いつも抱いてるうちに体に馴染んでいく
それが時間をかけてつくった革の本来の力なんやな
昔からある本当の革とはそうゆうもんや
今更になってヨーロッパを中心に
ノークロムやと言うてる