


クアトロガッツ
今年で『ブラック・ジャック』連載50周年を迎えます。連載開始から半世紀が経った現在でも、手塚マンガの中で特に人気あり、老若男女問わず読まれている名作ですが、この作品の何処が魅力だと感じますか?
手塚るみ子さん
世代や性別によって心惹かれるポイントがそれぞれあると思いますが、大きな点でいえば天才的な外科医ながらもアウトローという清廉潔白でない主人公の活躍を通じて、多種多様な人間の生き様や死に様を人情ドラマとして伝えているところが、時代を超えて読者の心をつかんでいるのだろうと思います。
作中に描かれる医療技術や医学現場の状況、また社会的背景などには時代的なギャップがあるのは否めませんが、登場人物が苛まれる人生の悩みや困難というのはどの時代においても人々に通じ、共感を得られるものであって、しかも一話完結という、決して複雑な構造や伏線を持たせずに端的なドラマとして終わらせる、そのシンプルさと娯楽性がまた世代を選ばずに受け入れられているんじゃないでしょうか。
クアトロガッツ
『ブラック・ジャック』は、1973年〜1983年の10年間で全242話の読み切りのお話しが生み出されましたが、るみ子さん一押しの回はありますか?
手塚るみ子さん
個人的には『ネコと庄造と』推しです。事故によって脳に障害を負った主人公が野良猫の親子を亡くした家族と錯覚して暮らすという、荒唐無稽な話ですが手術で完治した結果その主人公が野良猫をもう猫としてしか見れなくなっても、猫のほうは必死に家族としてすがりつく。
そんな猫の情愛から主人公も家族として暮らした時間を思い出し再び寄り添うことになります。自分が猫と暮らすようになってからあらためてこの物語の深さを感じることができました。
他にも『ポケットモンキー』『コマドリと少年』など、人間と生き物という種を越えた絆や親愛のドラマというのは手塚作品の真骨頂でもあるといえるでしょう。
クアトロガッツ
無免許医師という肩書きを持ち、ダークサイドのイメージがあるブラック・ジャックですが、るみ子さんの思うブラック・ジャックの人物像とはどのようなものでしょうか?
手塚るみ子さん
ブラック・ジャックは連載当初こそ無免許医で非情で横柄なアウトローという、ヒール的な主人公に描かれますが、徐々にその内面性、人情深さが浮き彫りになってきます。
世の中の組織や集団に収まることによって失われてしまう、もしくは歪められてしまう、人としての大切なことや医療に携わる者としての正義、そして医療の創造性と可能性を彼が守ろうとしていることが読者にわかってきます。
なぜ彼がアウトローの道を選んだのか、なぜ高額な治療費を突きつけるのか、どのような人に対して厳しいのか。それが理解できてくることで読者は彼を魅力的なヒーローへと置き換えてゆきます。
そしてピノコをはじめ家族や弱者に対してはとても情に厚いことから、女性読者からも人気が高いのもうなづけます。
手塚るみ子さん
ブラック・ジャックは社会のある一定の権威や価値観、組織や集団によって歪められる、創造も可能性も制限される世界に対するアンチテーゼを示す存在です。だからこそ読者にも共感をもたれたのでしょう。
なにより彼は手塚治虫自身の心を映しています。作家はつねに社会や集団や時代の価値観に対して孤独な戦いを挑んでいたはずです。
特にこの作品を描き始めた時期は多くの苦悩を抱えており、孤独でやるせなさもあったことでしょう。
ブラック・ジャックの冷酷で他者に厳しいキャラクター性は、手塚自身が社会において感じたことであって、それでもなおかつ人間に対して愛情を持ち続けたい。
どんな苦境にあってもどこかで誰かの人情が最後はその人生を助けるはずだと、手塚自身が信じてこの作品を描いていたのではないかと思います。
クアトロガッツ
『ブラック・ジャック』は、生と死、善と悪、愛と憎しみ、などの対比を医療を通して描かれていると思うのですが、手塚治虫の生死観について、どの様に感じていますか?
手塚るみ子さん
昆虫をはじめとする生き物を観察し、戦争を体験し、医学の現場を学んだ手塚治虫なので、生命の尊さと儚さについては何よりも深く心に刻まれていることでしょう。
だからこそこの世界で与えられた生命においてはその長さ短さに関係なく、ただ大切に生き尽くすようにと。無駄な時間はないのだからと。
人間は他の生き物より寿命が長いぶん余計な時間を使いがちだけれど、それでも軽んじることなく与えられた生涯にはしっかりと向かい合うべきであることを望んでいたと思います。
クアトロガッツ
『ブラック・ジャック』が連載開始された1973年は、手塚治虫が設立した「虫プロ」が倒産した年でもあります。『ブラック・ジャック』はその直後の大ヒット作となるわけですが、窮地に立たされた時の底力や、困難を乗り越える父手塚治虫を、るみ子さんはどんな風に見ていましたか?
手塚るみ子さん
当時の自分はまだ9歳かそこらで、父がどのようにその窮地と戦っていたかは記憶になく解りません。
後に父や母のエッセイなどを読むと、マンガ家として筆を折ることやこの先どう生きればいいのかというほどに、絶望的な気持ちになっていたと知りました。
それでもその絶望を父が乗り越えられたのは、持ち前の忍耐力と負けん気だったかと思います。と同時に、母が妻として逞しく父や家族を支える気構えができていたからとも思います。
やはり戦争を耐えて生き残った後、戦後日本の高度成長期を作った父母の世代の辛抱強さを感じます。
クアトロガッツ
ブラック・ジャックの奥さん(助手)として登場するピノコは娘である、るみ子さんがモデルになったという逸話がありますが、当時の想いも含めどのように感じていますか?
手塚るみ子さん
ピノコは私がモデルと言われていますが、手塚治虫がそう断定したわけではありません。
ただ私自身が大人になってから読み返してみた時、幼い頃の自分がピノコのキャラクターによく似ているなと感じたからで、それがいつの間にか「モデルではないか?」という逸話のようになってしまってます。
ただ作家である父にとって身近にいる少女は作品の少女像に反映しているものと思います。
たとえばウランは実の妹のイメージが反映されてたものの、60年代〜70年代のピノコやチョコラなどは私や妹がイメージになっていたんじゃないかと感じます。
クアトロガッツ
最後に手塚作品とのコラボは大変ありがたい事に今年で6年目に入ります。名作『ブラック・ジャック』が小さいふ。になった感想をお聞かせいただけますか?
手塚るみ子さん
数年前にたまたまデザインフェスタの出店で出会った小さいふという商品と、こんなにも長くコラボレーションが続いてることはあらためて感慨深く、ありがたく思います。
毎回その独創的なデザインセンスは楽しみであって今回の『ブラック・ジャック』もシンプルながらも小さなこだわりがカッコいいです。
50周年という記念に、それこそ老若男女の手塚ファンにご愛用いただけることを願ってます。
クアトロガッツ
コラボ第6弾『ブラック・ジャック』コラボの小さいふが無事に完成し、私たちもとても嬉しく思っています。今回も貴重なお話ありがとうございました。


1
12,800円(税込14,080円)
15,800円(税込17,380円)
12,800円(税込14,080円)
12,800円(税込14,080円)
15,800円(税込17,380円)
15,800円(税込17,380円)
12,800円(税込14,080円)
12,800円(税込14,080円)
15,800円(税込17,380円)
15,800円(税込17,380円)
12,800円(税込14,080円)
12,800円(税込14,080円)
12,800円(税込14,080円)
15,800円(税込17,380円)
SOLD OUT
1