革製品を選ぶとき、「タンニンなめし」「クロムなめし」という言葉を聞いたことはありますか?

なんとなくタンニンなめしの方が良さそう、とは感じていても、実際に何が違うのか、よくわからないという方も多いと思います。そもそも「なめし」って、何なんでしょう?

そもそも「なめし」って何?

牛の皮は、そのままでは腐ります。なめしとは、皮を腐らない「革」に変える加工のこと。この工程なしに、財布も鞄も作れません。

そしてこの「なめし」の方法によって、革の性質がまったく変わってきます。

タンニンなめしとクロムなめしの工程の違いを図解|革のなめし加工とは
栃木レザー工場でフルベジタブルタンニンなめしを手がける職人
栃木レザーの工場。職人の手で革が丁寧に処理される

クロムなめしとタンニンなめし。何がそんなに違うのか

世界に流通している革の約99%は、クロムなめしです。

なぜそんなに多いのか。答えはシンプルで、早くて安定した品質で作れるからです。

クロム(金属の一種)を使った化学処理で、早ければ3日で仕上がります。柔らかく均一な仕上がりで、大量生産に向いている。現代の革製品のほとんどがこれです。

一方、タンニンなめしは植物由来のタンニン(渋)を使って皮を革に変えます。栃木レザーが採用するのはその中でも「フルベジタブルタンニンなめし」。

ピット槽と呼ばれるお風呂のような大きな槽に皮を漬け込み、革にストレスを与えないようにじっくりと仕上げる製法です。

この工程に、180日以上かかります。

クロムなめしの3日と比べると、60倍の時間です。

クロムなめし革とタンニンなめし革の製造期間・品質の違いを比較解説
180日以上かけて仕上げられた栃木レザーのフルベジタブルタンニンなめし革
180日以上かけて仕上げられた、栃木レザーの革

「80%で出荷されて、120%になる革」という言葉

ここが、タンニンなめしの本質だと思っています。

遅澤社長はこう言っていました。

「クロムなめしは、出来上がった時点で完成度100%。でもタンニンなめしは、3ヶ月以上かけて作っても出荷時は80%の完成度しかない。そこから使い込むことで、100%、さらには120%のものに育っていく」

クロムなめしは買った瞬間が一番いい状態で、あとは少しずつ劣化していきます。

対してタンニンなめしは、買った時点ではまだ「途中」。使う人の手の脂や摩擦を受けながら、その人だけの革へと育っていく。

「エイジング(経年変化)」という言葉、よく聞きますよね。実はなめしの種類によって、その意味がずいぶん変わってきます。

使い込まれて経年変化したクアトロガッツ小さいふ|タンニンなめし革のエイジングで120%に育つ
新品と使い込んだ栃木レザー財布の経年変化比較|タンニンなめし革は使うほど味が出る
左:新品のsuシリーズ(素上げの革) 右:使い込んだsuシリーズ。同じ財布が、使うほどに育っていく

エイジングの正体「汚れが味になる」は誤解です

革のエイジングについて、「手の油や汚れが染み込んで味が出てくる」と思っている方がいます。これ、半分誤解です。

クロムなめし革のエイジングを詳しく見ると、繊維が潰れてオイルが表面に滲み出てくることで艶が出ます。

ただ、クロムなめしの多くは表面に顔料(塗料)をベタベタに塗る「厚化粧」仕上げ。これがやがて剥がれてきます。

高級車のレザーシートが5年10年で表面がバリバリに割れてくる経験をした方もいると思いますが、それは「革が割れた」のではなく「顔料が割れた」のです。

対して栃木レザーの革は、染料を革の芯まで染み込ませる「芯通し」仕上げ。表面に厚い塗膜がないので、剥がれることがない。

使えば使うほど繊維に脂が馴染んで深みと艶が出てくる。これが本物のエイジングです。

汚れが味になるのではなく、革そのものが育っていく。それがタンニンなめしのエイジングの正体です。

革のエイジングの仕組みを解説|タンニンなめし芯通しと顔料仕上げクロムなめしの違い
経年変化で深みと艶が増した栃木レザーのクアトロガッツ財布|芯通し染料仕上げの本物のエイジング
深みと艶が増した、使い込まれた小さいふ

フルベジタブルタンニンなめしとは?ベジタブルタンニンとの違い

「タンニンなめし」と「フルベジタブルタンニンなめし」は別物です。実はこの違い、あまり知られていません。

タンニンなめし(ベジタブルタンニンなめし)は、植物由来のタンニン液を使って皮を加工すれば、その名称を使用できます。

実は、最後の工程だけタンニンを使って「タンニンなめし」と表記しているケースも世の中には存在するのです。

フルベジタブルタンニンなめしはさらに厳格です。ピット槽という槽に皮を漬け込み、革にストレスを与えずにじっくりとタンニン液を繊維の奥まで染み込ませる。

機械でぐるぐると回す方法と違い、革本来の繊維構造を壊さずに仕上げられるため、長く使えて、丈夫で、深みのあるエイジングが生まれます。

世界の革の中で、フルベジタブルタンニンなめしが占める割合はおよそ1%未満

栃木レザーは、その最高峰に位置します。

フルベジタブルタンニンなめしを手がける栃木レザーの革職人|世界1%未満の希少な革
栃木レザーのピット槽で180日以上かけてなめされる革|フルベジタブルタンニンなめしの工程
栃木レザーの工場。世界有数の規模を誇るピット槽と製造設備

クアトロガッツが20年以上、栃木レザーを使い続ける理由

栃木レザーを使い続けることは、コスト面では決して有利ではありません。

それでも選び続けているのは、同じ型で作ったとき、素材が違うだけで2年後・5年後・10年後の仕上がりがまったく違うからです。

売り場でお客様と話していると、「10年前に買いました」と言って使い込まれた財布を見せてくれる方が多くいます。

自分たちが作ったものが、その人の手に渡って10年間その人と一緒に生きてきた。それがものづくりの喜びだと思っています。

タンニンなめしの革は、使う人のものになっていく。そういうものを作り続けたいから、栃木レザーを選んでいます。

タンニンなめしの原料ミモザと栃木レザーを使ったクアトロガッツ財布|自然由来の革となめし
タンニンの原料はミモザの樹液。革と自然の、美しい関係
クアトロガッツが20年以上選び続ける栃木レザー|使うほど十人十色に育つタンニンなめし革
十人十色の変化を楽しめる栃木レザー

まとめ:クロムなめし vs フルベジタブルタンニンなめし

  クロムなめし フルベジタブル
タンニンなめし
(栃木レザー)
製造期間約3日180日以上
世界シェア約99%およそ1%
出荷時の完成度100%約80%
経年変化劣化していく使うほど120%に育つ
表面仕上げ顔料(厚化粧)染料(芯通し)
最終的な状態剥がれ・割れが出る深みと艶が増す

革を選ぶとき、この違いを知っているだけで見え方が変わると思います。

「使うほど自分のものになる革を持ちたい」と思ったら、ぜひタンニンなめしを選んでみてください。

そしてその先に、栃木レザーというものがあります。

対談では、この他にも革の値段が上がり続ける理由、カナダ産原皮を選ぶ理由、廃水を肥料に変える環境への取り組みなど、革好きにはたまらない話がたくさん出ています。ぜひ動画でご覧ください。

使うほど自分だけの味が出るクアトロガッツの栃木レザー財布|タンニンなめし革の魅力
使うほど自分のものになる本物の革