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47都道府県にちなんだデザインをつくるJAPAN47シリーズ、岡山県モデルとして天然記念物である同県笠岡市のカブトガニ繁殖地にちなんだ「カブトガニ」をつくりました。

カブトガニモデルの完成を記念して、世界唯一のカブトガニ専門の博物館「カブトガニ博物館」の館長様でカブトガニの専門家である惣路紀通さん「生きた化石、カブトガニの保護」についてお話を伺いしました。
PROFILE

惣路紀通(そうじ・のりみち)
1956年、山口県に生まれる。別府大学卒。1980年、同大学生物学研究生のとき、別府湾のカブトガニ生息調査を行い、九州東海岸において初めてカブトガニの生息地を発見。1982年笠岡市立カブトガニ保護センターに着任。2017年カブトガニ博物館長を退職、2018年引き続き館長(嘱託)として就任し現在に至る。
著書「カブトガニ」(日本文教出版)、「自然への想い 岡山」(共著、山陽新聞社)、「カブトガニ」(山陽新聞社)、「カブトガニからのメッセージ」(文研出版)、「カブトガニの謎」(誠文堂新光社)等。

Q.カブトガニ博物館はどのような施設なのでしょうか
一般の方々に広くカブトガニという動物を知っていただくことで、それが保護・啓発に繋がっていくように考えられた施設です。


Q.なぜカブトガニ博物館ではカブトガニを保護・研究されているのでしょうか
日本におけるカブトガニは、減少傾向にあり、人が保護しなければ絶滅してしまう動物です。
その中でも笠岡のカブトガニは、人の手を借りなければすぐにでも絶滅する恐れがあります。
そのため、カブトガニを研究し、保護することで自然の中でカブトガニが繁殖することを目指しています。
Q.現在、絶滅危惧1類に指定されているカブトガニですが、なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。
カブトガニの生息している場所が埋め立てや干拓しやすい場所であったため、工業地帯や農地・宅地などに利用され、生息場所が奪われてしまいました。
また、水質汚染等の影響もあって、ますますその数を減らし、一説には国内では2000つがいほどしか生息していないといわれています。
昭和50年代の笠岡湾は、干拓によって生息数が減少し、さらに生活排水等の影響で湾が汚染されていました。
そこで生活するカブトガニも海水の汚染によって鰓が黒く変色し呼吸できずに死亡し、卵も孵化できない状況にありました。


世界的に珍しいカブトガニの幼生放流
Q.カブトガニ博物館の活動で思い出深いことがあれば教えていただけないでしょうか。
産卵確認調査です。
調査は夏場で干潮時の砂浜で行います。
カブトガニは砂中で産卵するため、砂を掘って卵を確認します。
しかし、砂浜は波の作用できれいに産卵跡をかき消しているため、どこで産んでいるのか見当もつきません。
従って、産卵調査はやみくもに砂を掘ることから始めます。
夏場で、しかも日陰のない砂浜を長時間にわたって、直径3mmの砂粒と見間違うような卵を探す作業は非常に困難を伴います。
調査は、ほとんどが空振りで終わることが多いのですが、見つけたときの喜びは、何物にも換え難いものです。


カブトガニの棲む干潟
Q.世界で初めてカブトガニの卵から成体までの人工飼育に成功したカブトガニ博物館ですが、その時の話を教えてください。
結果的に成体になるまで10年以上かかりました。
カブトガニのような成長の遅い生物を飼育するのは、とても根気を要しました。
また、病気のこともよくわかっておりません。
現在、卵から成体まで飼育した記録は、カブトガニ博物館と山口県の元高校教諭の2例です。


カブトガニの幼体(1齢幼生)
Q.なぜカブトガニ博物館で活動をされることになったのでしょう。
私は、学生時代、大分県の大学に在籍していました。大学を卒業し、そのまま生物学研究室の研究生として学んでいたころに、カブトガニに興味を持ち研究を始めました。
当時、大分県ではカブトガニを調査した人がいませんでした。私は2年をかけて別府湾を歩いて調査し、杵築市の海岸でカブトガニの産卵地や幼生の生育場所を発見しました。
これが九州の東海岸では最初の発見であったことから、全国ニュースになりました。
このニュースを見た方から笠岡市がカブトガニ保護センターで学芸員を募集している旨の連絡を受け、それ以後、40年にわたってカブトガニの研究を続けています。
Q.カブトガニの魅力とは。
カブトガニは、前にも述べたとおり、あまり研究されている動物ではありません。
従って謎の多い生き物なのです。
その謎を一つ一つ解明していくことが魅力だと思っています。
Q.今後、カブトガニ博物館の活動を通して伝えたいことは何でしょうか
カブトガニを守るということは、カブトガニだけを保護するということではありません。
その周りを含めた環境を保護するということなのです。カブトガニはきれいな海でなければ棲むことのできない動物です。
従って海の環境を守るということは、私たちの生活にも繋がることなのです。


カブトガニの成体放流
Q.わたしたちにできる保護活動は何があるのでしょうか。
カブトガニを守っていくためには、海の環境を守っていく必要があります。
例えば、海でゴミを捨てないなど身近に出来る一つ一つのことが海を守りひいてはカブトガニの保護に繋がっていくと思います。

惣路紀通さんに「生きた化石、カブトガニの保護」について伺いました。
私は岡山県出身で、小さい頃にカブトガニ博物館へ遠足に行き「こんな不思議な生き物が海にいるんだ!」と感動しました。
カブトガニモデル製作にあたって調査のため著書を読み、ぜひこの方にお話を伺いたいと思いインタビューをさせていただきました。
あまり研究が行われておらず、まだまだ謎に包まれた存在であるカブトガニ、その姿は約2億年前からほとんど変わっていないと言われています。
2億年生きたカブトガニたちが、たった数十年で絶滅の危機に瀕していること、一生懸命保護に取り組まれている方達がいること。
そしてそのユニークな生態をみなさまにもぜひ知っていただけると幸いです。

惣路紀通さんありがとうございました。



ティラノサウルスをはじめ7種8体の実物大の恐竜が展示されている恐竜公園も併設されており、休日には市民の憩いの場となっています。






小さいふ × カブトガニ


2019.12.05 21:00発売