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「立ち猫誕生秘話インタビュー」猫写真家 山本正義(まさよし)
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猫写真家 山本正義(まさよし)さんはSNSに投稿している猫の写真が人気で、特に猫が二本足で立っている「立ち猫」が「かわいい!」とインスタグラムで大人気になり写真集「立ち猫」(ナツメ社)を発売。
その後、TBSテレビ「有吉ギョーカイトラベル」でかまいたち山内さんに猫の写真撮影の手ほどきをするなど、テレビやネットニュースなどで多く取り上げられ話題になりました。
2022年4月16日(土)朝日放送、7時10分〜(関西圏のみ放送)おはよう朝日土曜日です!
なないろリサーチのコーナーに出演します。
そんな立ち猫とクアトロガッツのコラボアイテム発売を記念して、写真家の山本正義さんに「立ち猫」が生まれたきっかけ、猫写真家になった理由などをお聞きしました。
PROFILE
山本正義
猫写真家。主に、香川県の離島や瀬戸内海で撮影している。清水翔太きみが暮らす街「全国47都道府県をつなぐキャンペーン」大阪代表。全国公募写真展「視点」入選4回。第101回二科会写真部展入選。第4回5回岩合光昭アサヒカメラ猫写真コンテスト入選。
(C)Oki masayuki
いつもカメラを持っていた
「写真を始めたきっかけは中学生の時に自宅にあったフィルムカメラに触れたことでした。」
そこから興味を持ち写真を撮るようになった山本さんは写真の世界に触れるほど、平面の中に写る深い奥行きや、一瞬を切り取って世界観を表現することに魅力に感じ惹かれていきました。
その頃の山本さんはまだプロになることは考えていませんでしたが、知り合いのミュージシャンから撮影を頼まれたりというようなことはあったといいます。
みんなを笑顔にしたい
元々人を喜ばせることやボランティアに興味があった山本さんは福祉関係の資格取得しながら福祉施設で働いていました。そこで知的児童担当となり、その仕事の合間に自然と児童の笑顔の写真を撮影するようになりました。
「その写真を見てくれた児童の親御さんが絶賛してくれたことが嬉しくて本格的に写真に目覚め、活動をはじめるようになりました。」
西成との出会い
その後、お世話になった福祉施設から新たな仕事に転職するためにハローワークに通っていた頃のこと。
その近所には多くの失業者やホームレスの方が身を寄せる西成の町がありました。西成はいわゆるスラム街で、路上で人が寝ていることも当たり前で、良くも悪くも常識と非常識の境界線がありません。しかし、そこにしかない人情や人間模様がありました。
社会と離れて一人求職活動をしていた山本さんは、人と生きるというテーマについて考えるようになり、その答えを自分の足で探そうと思い、気がつくと西成の町の人々と触れ合い写真を撮っていました。そこには世間の物差しでは測れない様々な境遇の人々がいました。
「西成にいると社会的な立場や人権やブランド、自分の過去など全てが素裸になるように感じました。」
目が名刺がわりの町
西成で写真を撮り始めた山本さんはホームレスの方と仲良くなるためにダンボールで一緒に語りながら一夜を過ごした事もあります。親しくなった行きつけのホルモン屋の常連のヒロさんは、よく身の上話を聞いてくれ「失業なんてかすり傷やで」といって励ましてくれました。 西成に生きる人たちは世間体を取り繕うこともなく、ありのままの生きる強さを持っていました。
「西成の人たちは名刺など持っていません。その代わりに見るのは相手の目です。目は嘘をつけないからです。」
危険な目にも遭いましたが、それよりも出会った方々の眼差しを今でも思い出すといいます。 山本さんの座右の銘は「とにかく生きよう!」です。ネガティヴな経験もいつか見返してやるという反骨精神と前進の力に変えるようにしているそうです。
写真に没頭して
山本さんが西成の町で撮影した作品は入選もして写真家の方からも良い評価も受けました。 しかし気になることがありました。それは展示している写真を見ている人の悲しそうな表情でした。
山本さんは写真を撮るときには写すものに敬意を払うことを大事にしていますが、写真を見る多くの人にとってホームレスの方々は同情の対象でした。
社会的にマイノリティな立場の人たちに眼差しを向けるようになったのは、山本さん自身も昔から人と同じでなければならないという世間の風潮にどこか不自由さや生きにくさを感じていたからでした。
人と違ったところがあると誤解して変な目でみたり、馬鹿にするような偏狭な価値観が根強くあり、そのために差別され不平等なあつかい受けて苦しむ人の役に立ちたいという願いを抱いていました。
しかし、写真を見て悲しい顔をするということは「みんなを笑顔にしたい」「癒したい」というテーマとはどこか違っていました。
猫の写真家になる
自分の写真とは何なのかを模索する中で、転機が訪れたのは福祉施設での写真のワークショップをしている時でした。福祉施設を経営されている方のご好意で、退職後に施設内で写真を教えるワークショップの依頼を受けていました。
ある日ワークショップを開催していると、ダウン症の女の子がお母さんと一緒に教室に訪れ、壁に展示している写真を順番に見て回りはじめました。 教室には見本として山本さんが撮影した写真が壁に展示してあり、その写真の中には近所で撮った猫の写真もありました。女の子がその猫の写真を見つけた時のことです。
それまでの静かな様子が打って変わり、大喜びしながらお母さんの服を引っ張り、一生懸命に身振り手振りでその喜びを伝えようとしていました。
「人をこんな風に喜ばせることのできる猫ってすごい!」
その姿を見たときに山本さんは深い感動を覚え、猫を撮ることを決めたといいます。
写真のテクニック以上に、人に癒しを与えたい、一滴の雫のように心に深く沁みるような写真を撮りたい。探していた自分の写真の答えが見つかりました。
ネコミュニケーション
猫の写真を撮るようになり、どんどん猫の世界に魅せられていった山本さんは猫と仲良くなるために様々なアプローチでコミュニケーションを試しみるようになります。
猫と同じ視線まで体勢を低くすることや、仕草から猫が今どんな気持ちなのかを理解しながら猫とコミュニケーションをとることを「ネコミュニケーション」と名付けました。
ネコミュニケーションがうまくいくにつれ、猫は逃げることなく向こうから近寄ってきて遊んでくれるようになりました。
しかし、猫写真家となってからも順風満帆にいくわけではありませんでした。再びスランプに陥り、諦めようと思った時もありました。
立ち猫の誕生
いい写真が撮れなければもう諦めようかと思い詰めながら、いつものように猫と遊びながらシャッターを切っている時のことでした。一瞬猫がふっと立ち上がったその瞬間にシャッターを押すと、カメラには勇ましい顔で足を踏ん張って立ち上がっている猫の姿が写っていました。これは何か力強いメッセージになると感じました。
猫が立ち上がった写真を「立ち猫」と名付けてポジティブなメッセージと共に発信するようになると、写真を見た人たちからは元気になる、癒されると感想をいただき喜んでもらえるようになりました。その反響はメディアにも紹介され、2019年には写真集「立ち猫」(ナツメ社)を発売。第4回5回岩合光昭アサヒカメラ猫写真コンテスト入選。猫写真家として活躍することとなりました。
「立ち上がるということは、人それぞれ違いますが、その人の何かの一歩のきっかけになればと思っています。猫から元気をもらえて、何か感じていただけたらと思います。」
猫が教えてくれる
猫の媚びない姿が好きだという山本さんは今でも一匹で群れない猫を見ると胸がキュンとするそうです。
足音を立てずに壁や柵をすり抜け、陽だまりに寝転び毛繕いをする猫。その自由奔放、勝手気ままな立ち振る舞いを見ると、慌しい毎日の中にのんびりとした時間の流れが戻ってきます。
「白黒ハッキリしていて、喜怒哀楽がちゃんとあり、自分の世界観がある。」
猫の姿は飾らずありのままでいるというシンプルで大切なことを教えてくれます。 猫を撮影するようになった山本さんは、猫から教わることは全てだといっても良いほどだといいます。
「猫と出会ってから、現在の僕があると言っても過言ではなく、損得(ビジネス)よりも、支え合う猫を見ると人間が学ばなくてはいけないなと思う事が多いです。」
猫の縄張りや性格などを学ぶ中で、自分も優しく、人と比べたり、媚びたりせずに人と関わろうと思うようになったといいます。
人でも同じように素直で媚びない人が好きで、その代表が尊敬する岡本太郎さん。好きな言葉は”勝って結構、負けて結構””孤独が君を強くする””人生即芸術”「全てにおいて偉大な人。とにかく理由なんてないぐらい好きです。」
すべての人が生きやすい世の中に
山本さんおすすめの猫スポットは瀬戸内海の島々や、海外で云えば微笑みの国タイや台湾。猫は万国共通だといいます。
猫を撮影していることに自分自身も癒しを感じるという山本さんは、猫の写真が喜ばれる理由を「猫との一人の時間を堪能できるところもあると思います。」「語れないほど、猫とのストーリー。それは自分の宝です。」と語ります。
山本さんが主催する猫の写真のグループ展「猫色色」にはハンディを持った方も参加されています。そのきっかけは知的障がいを持っている方と出掛けながら写真を教えて欲しいというお願いからでした。
「周りには無理なのではないかと反対する声もありましたが、ハンディがあっても補っていけば何とかなるという思いが個人的にはありました。従来の型にはまらないことが、良い意味でお手本になればと思ってお手伝いをさせていただいています。」
誰もが同じではなく多様な価値観を持っている。お互いの違いを認め合い、すべての人が生きやすい世の中にしたい。そんな願いを持って写真を撮る山本さんの挑戦は続きます。
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