テアトル虹 第5回 映画「Summer of 85」8月20日(金)公開


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新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国順次公開!

監督・脚本フランソワ・オゾン 
出演フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォワザン、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、メルヴィル・プポー
配給フラッグ、クロックワークス

映画「Summer of 85」公式HP
劇場情報

8月20日(金)から公開される「8人の女たち」や「ぼくを葬る」、「2重螺旋の恋人」などのフランソワ・オゾン監督最新作。

彼が17歳の時に読み、最初に映画化したいと切望していた英国人作家エイダン・チェンバーズの『おれの墓で踊れ』が原作となっている。

ノルマンディの港町ル・トレボール(おそらくエリック・ロメール監督の「海辺のポーリーヌ」で描かれたところかも)に住む16歳のアレクシスは、友人から借りた小船で海を漂っていた時、悪天候に見舞われ転覆、そこで二つ年上の青年ダヴィッドという青年に助けられる。その出会いによって、二人にとっては忘れられない夏となる・・・。

ダヴィッドの猛烈なアタックによって距離がぐいぐい縮まるアレクシス。やがて濃密な愛と時間を求め合うようになるが、その終わりはあっけなかった。そう、ダヴィッドはバイク事故で死ぬ。残されたアレクシスは、彼との誓いを果たすためにある行動を起こす。

時代背景となる1985年、まさにアレクシスとほぼ同い年だった自分。
当時はまだ己のセクシャリティに確たる自覚はなかったゆえ、早く女の子と付き合いたいなぁなんてことを夢見ていたっけ。
そんなことを思い出しながら見ていたわけだけど、アレクシスの考えや行動はのちに20代前半の時に初めて付き合った人との自分とが被り、なんだかゾッとした。

そして映画の中でキーとなる女性がアレクシスに言う「あなたが愛していたのは彼じゃない、自分が創り出した幻想よ、顔と体を好きになって、心も理想通りだと期待した“理想の友だち”」というセリフにハッとさせられた。
アレクシスを通して、当時の自分に言われたようだった。

オゾン監督もおそらく同じような少年だったのかなとも思った。
だからこそこの小説に共感したのかもしれない。
彼の部分に残っている青春の刹那、焦燥がアレクシスを通して割と直球で描かれていた。

オゾン監督の初期の短編映画に「サマードレス」というのがある。恋人とのバカンス、ちょっと飽きて海へ出かけた主人公が女性と知り合い、ちょっとした時間を過ごす、が、残されたのは彼女のドレス。
主人公はそのドレスを着て自転車を漕ぐと言った内容なのだが、原作小説の影響がすごく出ていたなと思った。
今作でも、そのサマードレスのモチーフは描かれていて、ご丁寧にも柄は違えど色味は一緒という監督のこだわりも垣間見られた。

そしてTHE CUREの「In between days」とロッド・スチュアートの「Sailling」が象徴的に使われていり(この曲が流れる場面はソフィ・マルソー主演の「ラ・ブーム」を思い出して思わずキュンとしてしまう)、その対比も面白かったりする。

個人的にTHE CUREはドンピシャ世代なので使用された「In between days」が収録されてた「THE Head on the door」ってアルバムはよく聴いたなぁ~とか思い出し、映画を見た後に久しぶりに聴いた。

ラストもちょっとベタすぎるかもと思いつつもあ、そうだった、そうだった!と共感する人も多いかもしれない

仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


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