手塚治虫の描いたメッセージ

#5 語りべになりたい “悪夢のような記憶”

手塚ワールドとクアトロガッツのコラボ小さいふ。第一弾「ブッダ」第二弾「鉄腕アトム」の小さいふが誕生。
マンガのキャラクターの生みの親である手塚治虫が伝え続けてきたこと。それは生命の尊厳というテーマでした。
地球を守りたい、生命を守りたい、子どもたちの未来を守りたい。年月を経て一層輝きを放つ手塚治虫のメッセージに今一度耳を傾けたいと思います。


戦意高揚のための教育映画を学校では見せられ、遊びまで”戦争ごっこ”だった手塚治虫の子ども時代。朝から晩までさせられる軍事訓練のしごきと、絶食に近い食事に耐えかねて、訓練場の鉄条網をくぐって家に逃げ帰った日も。

学徒動員で軍需物資を作る工場で働くようになった手塚治虫は、ある日監視塔の上でB29の焼夷弾の爆撃にあいます。監視塔の上でああこれでおれはだめだと思い頭をかかえてうずくまると、からだのすぐ横を焼夷弾の束が台の板を突きぬけて落ちていきました。

正しい教育を受けることのできなかった子ども時代。
だからこそ未来の子どもたちには健全な批判力を養える教育環境を整えて欲しいと語っています。

「ほとんどの作品に描かれているテーマには、この悪夢のような記憶を、無意識に描いているものが多いのです。それは、ちょうど語り部のように、自分の体験を子どもたちに語って聞かせたい。そういう気持ちが動いているのでしょう。(中略)

戦争で負った心の傷も、肉体の傷以上に深く、到底いやされるものではありません。 こんなことも、もうぼくらの世代で永遠に打ち止めにしたいと、切に願います。

そのためにも、子どもたちが、健全な批判力を養えるような教育環境を整えることが、 先決なのではないかと思われます。」

(語りべになりたい『ガラスの地球を救え』より)

(C)手塚プロダクション / 講談社

手塚治虫 鉄腕アトム×小さいふ。

※手塚治虫の「塚」の字は、正しくは旧字体(塚にヽのある字)となります
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クアトロガッツ/WEBスタッフ 編集/文 中辻晃生 楠戸達也