『わかる』ハシモト会長かく語りき

第32話 証言「同じ払うなら 先に払っといてやれや」

証言 林 建次
株式会社 ハヤシゴ 代表取締役

忘れもしないある年の三月二十五日、こんなことがありました。
翌月の九日に銀行へ返済する一億円の準備をしていた私は、橋本社長にその話をしていたのです。
いつも銀行には厳しい橋本社長が、「銀行の支店長もサラリーマンやろ。三月末決算やからな。同じ払うんやったら、先に払っといてやれや」と言って、私に茶色の封筒を渡すのです。
その中には、なんと一億の小切手が入っていました。

ビジョン会でも、「これから、支払いは手形ではなく現金にしようやないか」と橋本社長が提案してきたことがあったんです。
すかさずある人が、「ほな、五%か十%まけてもらわなあかんなぁ」と言うと、「いや、違うねん。現金で払ってあげたら、相手は喜びはるやろ」と。
つい、現金やったら、まけてもらおうと考えてしまいますが、本社長は違う。
相手のことを考えているんです。

前述した銀行の話もそうですが、お金の使い方を考えろや、ということなんです。
橋本社長 は、いつもこう言います。
「苦しい会社には、締めが終わったら、お金は先に払ってあげなさい。
そのことが、どれだけ価値のあることか。私は、今でもそうしていますよ」


この連載について

「革っちゅうもんはなぁ、、、。」本物の革とは、商売とは、人間とは?
クアトロガッツを始めた頃に革屋さんではじまった人生談義。
それがハシモト会長との出会い。

80歳を超え、戦後からの日本を生きてこられてきた中で培われたその稀有な人生哲学と大阪ならではの人情味あふれる人柄。
「そや、ここに紙があるやろ。俺らは今までこの紙の裏をやってきたんや。いっぺん表をやろうと思うんや。」
珠玉の言葉を噛み締めていただければと思います。

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